婦人科領域では以下の診療を行っています。
月経異常
正常な月経とは、周期(月経開始日から次の月経開始日まで)日数が25~38日の間にあり、その変動が6日以内であり、持続日数が3~7日とされています。問診やホルモン検査、超音波検査などを行い、患者様の背景(年齢や学業、職種など)も考慮してニーズにあった治療法を選択しています。
月経困難症とは、月経期間中に月経に伴って起こる下腹部痛や腰痛(いわゆる生理痛、月経痛)、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、抑うつといった症状のことをいいます。また月経前症候群とは月経前3~10日の黄体期のあいだ続く身体症状(腹痛、乳房緊満感、腰痛、易疲労性、食欲充進、にきび・吹き出物、眠気)や精神症状(イライラ、易怒性、意欲減退、不安感など)のうち、日常生活に支障をきたすものをいいます。
いずれも女性ホルモンの変動により起こってくる症状ですが、患者様の症状に合わせた薬物療法(漢方療法、低用量ピル、抗うつ薬など)も行っています。
不妊症
不妊症の原因はさまざまであり、排卵(卵巣因子)、受精(卵管因子、男性因子)、着床(子宮因子)にいたるどの課程に問題があっても起こります。そのためにはー通りの原因検索を行って、適切な治療法を選択することが重要です。
当院では特に初めて不妊治療を行う方に対しては一連の不妊症関連検査を実施し原因検索を行っています。また、多くの場合は検査で明らかな異常所見を認めないものの、なかなか妊娠しないという状況にある患者様も少なくありません。
同じ方法でうまく行かない場合は、適切にステップアップ(タイミング→人工授精→体外受精・顕微授精)することをお勧めしています。
※体外受精・顕微授精といった生殖補助技術(ART)による不妊治療は当院では実施していませんので、適切な施設へご紹介いたします。
不育症
不育症とは、妊娠はするものの流産や死産を繰り返し、赤ちゃんを得ることができない状態のことをいいます。また流産を2回繰り返している場合は「反復流産」、3回以上繰り返している場合は「習慣流産」と呼びます。
不育症は血栓性素因(血管内に血液の塊(血栓)ができやすい体質)や子宮の形態異常、ホルモン異常、夫婦の染色体異常(均衡型転座)などが関わっていることが多く、それらの異常がないかを調べるための血液検査を行います。
一方で、もともと受精卵の45%には染色体異常を伴っており、一般的な流産率は10~15%といわれています。偶発的に起こった受精卵の染色体異常がたまたま続くことにより流産を繰り返している、という方も珍しくはありません。
不育症検査
血液検査(血栓性素因、ホルモン検査など)夫婦染色体検査
更年期障害
更年期とは閉経前後5年間の期間をいいます口この期間にみられる日常生活に支障を来すさまざまな症状を更年期障害と呼んでいます。
この時期には加齢に伴う体の変化もさまざま起こってくるため、この時期に見られる症状のすべてが更年期障害というわけではありませんが、エストロゲンという女性ホルモンが低下してくることにより起こってくる症状については、女性ホルモンの補充により改善が見込める場合があります。また症状に応じて漢方療法や抗うつ薬などの処方も行っています。
子宮がん検診
当院では北九州市の子宮がん検診を受けることができます。子宮がん検診で異常所見を腔めた場合、所見の種類によっては精密検査を行います。当院では腟拡大鏡(コルボスコープ)を用いた組識検査も行っております。
子宮体癌の検診は、無症状であれば定期的に行う類いの検査ではありませんが、出血などの症状がある場合、超音波検査で子宮内膜の肥厚所見を認める場合、子宮体癌のリスク因子(乳癌治療におけるタモキシフェン内服など)がある場合には、子宮内膜の細胞診や組織診を行っています。
婦人科良性疾患(子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症)
子宮筋腫は平滑筋の腫瘍が子宮にできる疾患で、大きさや数、できる場所によっては過多月経や月経困難症、圧迫症状などの原因となりますが、一方で自覚症状がほとんどない場合があります。
子宮腺筋症は子宮の平滑筋の内部に子宮内膜症の組織が形成されることにより、子宮の一部あるいは全体が大きくなった状態で、子宮筋腫に似た症状を来します。
子宮内膜症は卵巣や骨盤腹膜や靱帯内に形成された子宮内膜に似た組餓により周囲の癒着や嚢胞形成(チョコレート嚢胞)することによって、月経困難症や慢性骨槃痛、性交痛、不妊症などの原因となる疾患です。
いずれの場合もホルモン剤を中心とした薬物療法により症状のコントロールを図れる場合がありますが、サイズが大きい場合や根治的治療を望まれる場合、悪性疾患との鑑別を要する場合は手術療法を選択します。近年では腹腔鏡手術による低侵襲手術が主流となってきており、小さな創での手術をご希望される場合には近隣の高次医療機関にご紹介しています。
骨盤臓器脱
骨盤内臓器(子宮、膀脱、直腸など)が腟内に下りてくることによりおこる疾患です。
特に複数の分娩を経験された方やご高齢の方に見られる症状ですが、まれに若年の方に見られる場合もあります。陰部や下腹部の違和感や排尿・排便の機能にも影響を与えている場合があります。保存的治療としてペッサリーという器具を腟内に挿入し、弛緩した腟を支えることによって症状を改善します。
性感染症検査
おりものを調べる検査(細菌顕微鏡検査・腟分泌物細菌培養検査)により淋菌、トリコモナスなどの有無を調べることができます。また子宮頸管粘液を採取することによるPCR検査(淋菌、クラミジア)も行っています。
血液検査では梅毒、クラミジア、肝炎ウイルス、成人T細胞白血病ウイルス、HIVなどの検査を行っています。(自費で行う検査を含みます)
避妊指導
望まない妊娠を回避することは女性の身体面・精神面における健康維持には重要と考えます。
一般的にはコンドームによる避妊を行うことが多いと思いますが、排卵を抑制すること(低用量ピル)や着床を阻害すること(子宮内避妊具)による避妊は効果も高く女性が積極的に行える避妊法として有効です。また偶発的な避妊の失敗に対処するための緊急避妊ピルの処方も行っています。